懐かしい。

とは言っても、毎年クリスマスには帰ってくるから一年ぶりだ。
日本に帰って一番にすることは、あのテーマパークに行くことだ。
それも、たった一人で。
恋人たちの聖なる日に水を差しながら、学ラン男子ではしゃぎまわるよりずっといい。
こういう場所を一人で楽しむ人だって、最近は増えてるっていうし。
だけど俺は、パレードを見るわけでもなく、季節限定のメニューに舌鼓を打つわけでもなく、写真を撮ることもない。
ただ一人、ベンチに座って、クリスマスの雰囲気を味わうだけだ。

テーマパークに着くのは飛行機の到着時間などの関係で、いつも夜の八時くらいになる。
暗がりの中で、遠くの方から聞こえてくる賑やかなパレードの音楽を聴いたり、一瞬で過ぎ去るジェットコースターからの悲鳴を拾い上げたり、ざくざくと聞こえる乾いた足音に心地よさを感じたり。
一人で空しいなんて、全然感じなかった。
この場所で、あの頃の自分たちの姿を探すのはちょっと楽しい。

一時間程その場でぼんやりしてから、スーベニアショップに立ち寄る。
そしてキャラクターたちのその年のクリスマス衣裳をじっくり確認する。
買うのはいつも同じキャラクターのキーホルダーだ。
ペアになるように男女のマスコットを手にすると、それだけ持ってレジに並ぶ。
会計を済ませると、それをコートのポケットにそっとしまい込んで、パークを後にする。
そして少し早足で歩き出す。