俺は抱えていたボールを、足元に軽く放った。
小さくバウンドするボールを足元に引き寄せて、軽くポーンと空にあげると、そこから何となくリフティングが始まった。

__ああ、やっぱり、落ち着くなあ。

こうしてぼんやりリフティングをしていると、直感が磨かれる。
いつだってこうして、俺は直感を磨いてきた。

直感は大切だ。
直感で選ぶものは、すべて正しい。
正しい、はずなのに……

__俺の直感は、ほんとに正しかったのかな。

直感で選び取ってきたものが、一つずつ、俺の頭の中に現れては遠のいていく。
蹴り上げられたボールのように、頂点に達したら忠実に戻ってきてはくれない。
放ってしまったらそのまま、灰色の空に吸い込まれて、もう帰ってこない。

俺はボールを、高く、高く、蹴り上げた。
まるで自分の想いを、すべて、その空の中に隠すように。
俺がリフティングする理由をよく知っている広瀬は、飽きることなく俺のリフティングを見て待っていた。
俺の友達は、こうしてリフティングが始まるといつも待っててくれる。
広瀬も、園田も、そうだった。