それなのに、その光景を前に、俺はその日から完全に冷静さをなくしていった。
会いたくて、見つけたくて、あんなに探し回っていたはずの日々が嘘のように、その日を境に、容易に坂井さんを見つけられるようになった。
もっと言えば、園田と一緒にいる坂井さんを見つけるようになった。

教室で、廊下で、グラウンドで、調理実習室で。
二人だけで行動しているわけではないと頭では理解している。
だけど、まるで俺に見せつけるように、二人は俺の視界に映り込んできた。

そして文化祭一日目。
火傷を負った坂井さんの手を大切そうに撫でる園田の姿に、文字通り、頭に血が上った。
今まで抱え込んだ、寂しさや切なさや、苛立ちや、不安や焦りが一気に押し寄せてきた。

近づくな。
見つめるな。
触るな。