__会いたい。

せめて、その姿を見ることぐらい叶ってほしい。
いつから会っていないだろう。
いつから話していないだろう。
夏休みの間に、連絡は何回かしたぐらいだ。
最後に抱きしめたのは、いつだっけ?
手をつないだのは?
キスをしたのは?

彼女の声や笑顔、柔らかな体の感触に、細くて小さな手、唇から伝わる緊張感。
思い出を辿るように、ぼんやり歩いていた。
まるで、彼女が落としていった、わずかな跡を追いかけるように。
名犬が、探したい大切なたった一つの匂いを辿っていくように。
そしてたどり着いたのが、学校の近くの大型ホームセンターだった。
何となく歩いてきた結果だった。
直感だった。
そこには確かに、坂井さんがいた。

だけど彼女を見つけてほっとしたのと同時に、喪失感を味わった。
だって俺の目に映ったのは、坂井さんと、園田だったから。
二人の前を、岡田さんを含めた他のクラスメートも歩いている。
恐らく文化祭の買い出しだ。

わかってる。
当たり前じゃないか。
それ以外、こんなところ、来ないし。
ただのクラスメート。
ただのグループ行動。
ただの買い出し。
ただの祭り。