だけどそんな舞い上がる気持ちも、長くは続かなかった。
今までの、あの割り切りや諦めとは違う。
坂井さんを追いかけるもう一つの視線に、気づいてしまったからだ。

俺の隣には、いつも園田がいた。
その視線を追いかければ、すぐに気づけた。
隣にいれば嫌でもわかった。
その視線の先が、自分と同じ場所に行きつくことを。

その時のことも、その瞬間のことも、胸が痛いくらいに思い出せる。
坂井さんに一目ぼれした瞬間と同じくらい、鮮明に。

友達と、同じ人を好きになった。
面倒なことになったと思った。
「どうしよう」なんて、口癖になるほどつぶやいた。
漠然とした疑問だけがいつも頭に浮かんで、その解決策が見つからないまま泡のようにしゅわしゅわと消えていく。

だけど、坂井さんへの気持ちは膨らむばかりだった。
抑えられなかった。
目が合えば嬉しいし、話しかけたいし、少しでもそばにもいたい。

そう思うのは、当たり前じゃないか。

好きなんだから。

それなのに、俺は人並みに恋をしているだけなのに、好きという気持ちが大きくなるほどに、切ない気持ちも同じくらい、俺の心の中で育って付きまとう。