坂井さんは一気にそう言った後、最後に「ごめん」と小さく放った。
その「ごめん」は一体どういう意味なんだろう。
俺に向けられたのだろうか。
それとも、園田に向けられたのだろうか。
どちらにもかもしれない。

「わかった。ごめん。無理言って」

園田は落ち着いた声でそう言った。
その言葉と同時に、俺の体もプシューっと空気が抜けるように脱力していったのがわかった。
それなのに、「でも……」と続いた園田の声に、再び俺は耳を奪われた。

「その時は、僕のこと、見てくれる?」
「……え?」
「坂井さんが、自信をもって人を好きになれるようになったその時は、また恋がしたいって思ったら、次の恋に進めるようになったら、その時は、僕のことも、見てほしい」
「園田君……」
「今度は僕が、坂井さんを一目ぼれさせるから。そんな男になるから。またあいつよりも先に坂井さんを見つけて、一目ぼれさせるから。他の男になんて、恋、させないよ。だから、一瞬でいいから、僕のこと、見て。その時まで、僕の気持ち、覚えてて。僕のこと、意識、して。僕ももう一度、坂井さんに、一目ぼれするから」

園田の声の熱が、俺の方にまで伝ってくる。

__ひとめ、ぼれ……

「僕も、坂井さんに、一目ぼれだから」

恥ずかしそうにそう言う園田の仕草や表情が、手に取るようにわかるような気がした。