「あいつもバカだよ。なんでちゃんと伝えないんだよ。なんでこんな遠回しにしか伝えられないんだよ。頭いいくせに、何でもそつなくこなすくせに、こんな時だけ不器用かよ。わざわざ僕に坂井さん家まで運転手させて、二人だけの絆みたいなもの見せつけて、何が楽しいんだよ。全然面白くないから。だって僕が入る隙なんて、どこにもないし」

「園田君……」

「だったら僕でいいじゃん」

「え?」

「あいつのことそんな風に思ってるなら、もう終わらせたいって思ってるなら、僕にしなよ。僕のこと見てよ。意識してよ」

「あの、だから私、今は好きな人とか……」

「そんなのただ逃げてるだけじゃん。あいつの気持ちからも、自分の気持ちからも。僕の気持ちからも。浪人して自分の進路を見つめ直すなんてのは言い訳だよ。向き合いたくないだけ。あいつと向き合ってからだって、自分の進路見つめ直すことはできるでしょ? 今やらなきゃいけないことは、逃げずに向き合うことなんじゃないの?」

二人の心臓の音が聞こえるようだった。
だってその音は、まるで俺に伝播するように、俺の心臓もドクドクとさせたから。