弾けるように体が動いた。
軸足に力をこめて、校舎の壁際から飛び出そうとした時だった。

「坂井さんは、それでいいの?」

その声に、体がぐっと引き戻される。

それは確かに、園田の声だった。

「あいつと付き合ったこと、なかったことにしたいの? 忘れてほしいの? 吹っ切れたいの? 僕には無理して言ってるように見えるんだけど、気のせい?」

園田は淡々と、坂井さんにそう聞いた。

「それに、あいつも坂井さんのこと、今もまだ好きなように見えるんだけど、坂井さんには、わからないのかな? 僕には、嫌みなほど伝わってくるんだけど」
「園田君?」
「わかってるんでしょ? なんでそんなめんどくさいことしてるの? 気持ちが通じ合ってんのに、なんでわざわざすれ違うようなことするの? 何か意味あるの? 別れなきゃいけないの? そもそも、なんでこんなことになってんの?」

園田は呆れておかしそうに言うけど、どこか無理してそう取り繕っているようだった。