俺は彼女が被っていたフードをそっと取った。
フードの中にこもっていた良い香りが一気に立ち上り、俺の鼻を喜ばせる。
フードで乱れた髪を直そうとすると、坂井さんが逃げていく。
そして鼻をすする音を誤魔化しながら、こみ上げるものがこぼれ出ないように、夜空を仰いで俺に念を押すように言った。

「来年のクリスマスも、絶対に来てよ」
「行くよ、絶対に。日付が変わる前に」

来年のクリスマスも、再来年のクリスマスも、その次も、ずっとずっと、会いに行くよ。
どんなに遅くなっても、必ず。

「プレゼントも、忘れないでね」

俺から恥ずかしそうに目をそらしながら、彼女は冗談っぽく言った。
そうかと思ったら、上目遣いに「約束だからね」と言って、俺の目の前にキーホルダーを掲げた。

「え? またこれでいいの?」

俺も冗談っぽくそう言いながら自分のキーホルダーを彼女の前に掲げる。

「またこれがいいの」

そう言い切る彼女の瞳が、ゆらゆらと揺れるマスコットに注がれる。

その目を、俺の方にも向けてほしい。