だけど、探しても見つからなかった。
変な意味じゃない。

坂井さんのことは、なんとなく、好きなんだ。
なんとなく好きになった。
なんとなく、これは恋なんだと思った。
好きになった理由なんてない。
目が合って、不意に触れられたその瞬間に、俺は坂井さんを好きになったんだから。

その一瞬から。


__「俺、坂井さんに一目ぼれした」


坂井さんに告白した時の言葉がふと脳裏をかすめていった。
威勢よく放たれたその言葉が、俺の頭の中をすがすがしくしていく。

「きみに、ひとめぼれ……か」
「え?」
「そういえば、坂井さんも俺に一目ぼれしたって言ってたよね」

「えっ?」という坂井さんの裏返った声が、静かな住宅街に響いた。

「う、うん。そ、そう、だね。何、急に」
「俺のどこに一目ぼれしたの? 俺、イケメンでもないしさ、坂井さんと接点なんて、授業中ぐらいだし。なんでそうなったのかなって。俺に一目ぼれする要素、あった?」

坂井さんは口元を抑えたまま、「うーん」と唸って目線を下げた。

「確かに。私、面食いだからな」

そこまで言って坂井さんは「はっ」と言ってまた口を押さえ直した。

別に気にしない。
むしろ正直でよろしい。