ポンチョの中からくぐもって漏れてきた彼女の声が、鼓膜をくすぐった。

「ほんと、勝手だなあ」
「え?」

声の方を見ると、ポンチョの中から坂井さんの困ったような、呆れたような上目遣いが見えた。

「ずるいなあ、勝見君は」

そのかわいらしさに、一瞬息が止まった。

「私も、一緒に行きたかったなあ、テーマパーク」
「あ……えっと、ごめん。来年のクリスマスは一緒に行こうよ」
「来年は勝見君たちが送り出される番でしょ?」

あ……と思ったきり、何も言い返せない自分が情けなかった。
そこは男らしく「坂井さんの方が大事だよ」って言うべきところなのに。

気まずく目を泳がせていると、「ふふふっ」と坂井さんの口元から小さな笑い声が漏れた。

「また……」

彼女の小さな声に、俺は「え?」と視線をやった。

「来年のクリスマスも、また、来てよ。こうやって、日付が変わる前に」

彼女は少し恥ずかしそうに目を伏せて、だけどどこか楽しげな声で続ける。

「サプライズしてよ。来年も」

ぽかんとしたまま聞いている俺を、彼女は上目遣いで確認するように見てくる。
そのかわいらしい目が、俺の体温をぐっと上げていく。
のぼせていく自分に恥ずかしさと戸惑いを感じて、思わずその目から逃げた。
そして誤魔化すように笑って言った。

「約束したら、サプライズにならないじゃん」
「ああ、そっか」

のん気に笑いながら言う彼女は、再び指先にぶら下がるキーホルダーのマスコットに視線を戻した。