お土産の渡し方を、電車に揺られながら、自転車をこぎながら、ずっと考えていた。

__「女子はサプライズ、好きだから」

俺に手を持っていかれた彼女は一瞬「え?」と不安げな声を上げた。
だけど俺はその声にかまわず、彼女の手を両手で包み込み、その指先をそっと撫でた。
彼女の手は細くて、冷たくて、でもすごく滑らかだった。

片方の手でポケットの中に忍ばせたものを音を立てないように取り出して、彼女の左手をもう一度確認した。
そして輪になった部分を、彼女の左手の薬指に、そっとひっかけた。
その瞬間、彼女の背筋がすっと伸びたような気がした。
俺はそのままゆっくりと、リングを彼女の細い指に這わせた。
指の根元まで入れたところで、俺はふーっと息を吐いて、手を離した。

「目、開けていいよ」

その言葉にゆっくりと開けられた彼女の目には、期待というきらめきがあふれているように見えた。
だけど次第にじわじわと眉間にしわが寄せられ、口がぽかんと開けられる。
そして顔の前に、その手を持ってきた。
リングの先からゆらゆらと揺れるマスコットを、きょとんとした顔でじっと見つめた。
その目が何かを問う様に俺の方に向けられると、俺もすっと左手を顔の前にあげて見せた。

俺の左手には、彼女と同じように、薬指にひっかけられたリングの先から、マスコットが情けなくぶらぶらと揺れていた。

何も言わず、彼女の反応をうかがった。

彼女も何も言わず、じいっと俺の方を見ていた。