「今さらだけど、留学なんて大丈夫なん?」
先ほどまで思い出話に花を咲かせていたのに、広瀬は神妙な顔をして、そんなことをパスと共に突然送ってきた。
だから俺も、パスと共にその答えを返していく。
「心配してくれんの? 広瀬のくせに」
「そりゃ俺だって心配するよ」
「何の心配だよ」
「ほら、寂しくなったりとかさ。もう俺たちにも会えないわけだし」
「寂しくなるかよ」
「そんなこと言うなよ。寂しいだろ」
その言葉と共に、広瀬のボールが強く蹴られた。
いつも通りボールを止めようと足を延ばすと、大きく跳ねて空に舞い上がった。
舞い上がったボールを追いかけた目が、広瀬の姿をちらりと仕留めると、どこか寂しげだった。
__マジなのかよ。
だから、俺は見ないふりをしてボールだけを追った。
そして、再びボールを広瀬に返す。
「サッカー部全員で見送りなんて、いいのに」
「なんでだよ。お前だって嬉しいだろ? サッカー部全員で見送り来てくれたら、感動して泣いちゃうんじゃない?」
「泣かないし。てか三年は自由登校だからいいけど、一、二年はまだ六限まで授業あるだろ」
「お前のためなら、みんなサボって来るんだって」
それでいいのだろうか。
俺は苦笑いしながら、青い空を見上げた。
俺の目の前を、飛行機がスーッと線を引きながら通過していく。
あと数時間後には、俺も空の上だ。