広瀬の提案で、サッカー部全員で俺の見送りをしてくれることになった。
学校に集合して、みんなでぞろぞろと駅まで歩いていく。
その光景を想像するだけで、毎年恒例となっているクリスマスイブの三年生の送別会を思い出す。

俺と広瀬はみんなとの待ち合わせ時間よりも早く学校に来て、時間つぶしにパス練習でもしながら思い出話に花を咲かせていた。
広瀬とパス練習をするなんていつぶりだろう。

俺と広瀬は普段つるまないくせに、こうして部活の時だけパス練習のペアを組む。
いつも一緒にいる園田とやってもいいんだけど、園田はいつも隅の方で密かにリフティング練習をしている。
以前リフティングができないことを広瀬と一緒にからかったら、リアルな涙目を見せてきたので、それ以来俺たちはリフティング中の園田に声をかけなくなった。
バツの悪い者同士がパス練習のペアを組んだという、ただそれだけのことが始まりだった。