語学カフェのバイトを続けて、もうすぐ二年が経とうとしていた。
高校三年生の夏休み、俺はスポーツカフェで知り合った例のイギリス人に、イギリスに一時帰国するけど、一緒に来ないかと誘われた。
イギリスはいつか行ってみたい国だった。
サッカーの本場だし、憧れがあった。
だから俺は、迷うことなく、イギリス行きを決めた。
彼は親切にイギリス観光に付き合ってくれた。
そして、彼の通う大学にも連れて行ってくれた。
広いキャンパスを丁寧に案内してくれて、俺はちゃっかりイギリスでの学校生活を疑似体験していた。
そして最後に連れてきてくれたのが、彼が所属しているというサッカーチームの練習場だった。
彼は俺をメンバーに紹介してくれた。
それだけでなく、練習にも参加させてくれた。
リアルな「カモン」のジェスチャーに誘われて、数分後にはピッチに立っていた。
軽くパスやドリブルの練習をして、シュートをして、ピッチを選手たちと一緒に駆けていた。
純粋に、楽しかった。
サッカーの本場なんだから、もちろんみんな上手くて、サッカーの強豪校の生徒でもない俺なんて、手も足も出なかった。
ピッチの上でただ弄ばれるだけだった。
だけど、それが楽しかった。
ボールを追いかけるのがこんなに楽しいなんて、いつぶりだろう。