「あかり、勝見君と同じ志望校受けるんだっけ?」

その問いかけに、背中がびくりと反応を示す。

「う、うん」
「どこ受けるの?」
「な、なんで?」
「同じとこ受けたいっていうのは前から聞いてたけど、どこ受けるのかは聞いてなかったし。ほら、勝見君頭いいし、あかりも最近ものすごい勢いで勉強頑張ってるからさ、どの辺目指してるのかなあと思って」

そんなことを聞かれて、私は小さく動揺する。
だって、私の成績には全く見合わない志望校名だから。
言うのが恥ずかしいくらい、恐れ多いぐらい、分不相応だから。

誤魔化すように目を泳がせる私を、由美の大きな目は逃がしてくれない。
本当は言いたくないけど、観念して小さな声でその志望校名を告げた。
すると由美の目が、現状の何倍にも大きくなる。
その水晶玉のようなきらきらした目玉が、こぼれ落ちてしまんじゃないかと思うほどに。

「超難関じゃん。てかあかりって、そんなに勉強できたんだ。知らなかった」

由美は素直だ。
言葉通りの尊敬の目を私に惜しみなく向けてくる。
そんなきらきらした目で見られているのは居心地悪くて、「そんなわけないじゃん」と小さくつぶやいてから、先ほど進路指導で返却されたばかりの模試の結果を差し出した。
こんな結果、人に見せるようなものではないけど、私の現実をぜひ知ってほしい。