別に、特別な進路を選んだとは思っていない。
ごく自然な流れでたどり着いた結論だった。
高校に入学して、サッカー部に入部が決まってすぐに、代々サッカー部の行きつけと言われているスポーツカフェに、先輩たちに連れられてやってきた。
「スポーツバー」なんてのは聞いたことがあったけど、その店は高校生でも気軽に入れる雰囲気の、カフェというより喫茶店だった。
入ってすぐに店内の雰囲気が気に入った。
スポーツにちなんだ面白い名前のメニューに心躍った。
大柄な店長のおおらかな人柄に魅かれた。
モニターから流れるスポーツ中継、それを邪魔しない程度の控えめなBGM。
ずっとここにいられると思った。
ずっとここにいたいと思った。
この空間に、ひとめぼれした。
俺はその日にこの店でバイトをすることを決め、その日のうちに面接を終え、翌日から働き始めた。