坂井さんに会うのは、三学期の始業式以来だ。
話すのは、いつぶりだろうか。

坂井さんは僕の質問に、少し言いにくそうに答えた。

「ああ……、うん。私も、今日はちょっと先生に用事があって……。浪人報告というか……」
「え? 浪人、するの?」
「……うん」

彼女は僕から目をそらして、恥ずかしそうな、気まずそうな微妙な笑顔でうなずいた。

「でも、まだ受験終わってないでしょ? 結果だって出てないし」
「そうなんだけど、このままじゃ、ダメだと思ったから」
「……え?」
「私、勝見君と同じ大学目指してたでしょ? でもやっぱり、私の実力ではそれは無謀で。そんなのはじめからわかってたことなのに、無理して、無駄に焦ったり不安になって、勉強も思う様に手が付けられなくて。それで、先生とも話し合って、合格圏内の大学受験することにしたんだ。でも……」

そこまで言って、坂井さんの表情きゅっと引き締められた。

「このまま進んじゃいけないような気がしたんだ。今のまま行ける大学に進んでも、きっと後悔する気がして。納得いかないような気がして。だから、自分の将来のこと、ちゃんと考えて、もう一度自分と向き合って、自分の結果を出そうって決めたの。自分の進路を、ちゃんと見つけようって」

スカートの裾辺りで、こぶしがきゅっと握られていた。