「それが、彼氏のすることなの?」

「は?」

「彼氏って、そういうもんなの? 好きになった人を、自分を好きでいてくれる人を、平気で泣かせたり、寂しくさせりするの? 連絡もしないで自分の好きなことやって、大切なことは勝手に決めて、都合のいい時だけ彼氏面して、それ以外はほったらかしにしておくのが彼氏なのかよ」

「すごい言われようだな。ていうか、ずいぶん坂井さんと仲がいいんだな。俺とのこと、坂井さんからあれこれ相談されてるわけ? 熱心に話聞いてあげてるんだ。園田は優しい……」

「逃げるなよ」

あいつの言葉を遮る僕の鋭い声が、静かな住宅街を貫いた。
どこまでも響くその声が消えていくと、はっと我に返った。
なぜか、一気に居心地の悪さを感じた。

「えっと、だから……話、そらすなよ。だから、僕は関係ないって言ってるじゃん。二人の問題だろ。僕を二人の問題に巻き込むなよ」

先ほどまで威勢よくあいつの過ちを指摘していたはずなのに、何も間違ったことなんて言っていないのに、僕はあいつから完全に目をそらし、話す声も逃げ腰になっていた。

「僕が何か誤解させるようなことしたんなら謝るよ。だから、ちゃんと仲直りしろよ。こんな状態のまま、留学行くのかよ」

僕がそう言ったしばらく後に、あいつは言った。