自転車から降りたあいつは、門の前まで行ってぴたりと止まった。
そしておもむろに後ろポケットからスマホを取り出すと、一瞬だけ画面を明るくした。
そして、今度はズボンの左横ポケットに手を入れて何かを取り出した。
その時、コロコロと、小さな鈴の音がこぼれた。
あいつが手にしていたのは、先ほど行ったテーマパークのメインキャラクターがついたキーホルダーだった。
ウサギの雄キャラと、リボンを付けた雌キャラだ。
キーホルダーについたマスコットは、大人の手のひらですっぽり包み込めるほどの大きさで、だけどその毛並みはふわふわと上等そうに見えた。
あいつはその一つを、ポストの取り出し口の取っ手に、そっとかけた。
そしてもう一つを、再びポケットにしまった。
引っ掛けられたキーホルダーを、あいつはじっと見たあと、指先でそっと撫でるように触れた。
しゃらんというか細い音が、一層深くなった静かな闇の中ではきらめくように響いて吸い込まれていく。
その音が完全に消えるのを確認して、あいつはようやく僕の方に向きなおった。
「ごめん、待たせて。行こうか」
僕の自転車にまたがることもせず、あいつはそのまますたすたと歩いていく。
その後ろ姿に、僕は咄嗟に声をかけた。
「会わなくて、いいの?」
あいつはぴたり止まってから答えた。
「……お土産、渡しに来ただけだから」
「直接渡せばいいじゃん。僕、どっか行ってるし」
「こんな時間に呼び出せるかよ」
あいつは前を向いたまま軽く笑いながら言った。
その声や仕草から、僕は感じ取った。
そしておもむろに後ろポケットからスマホを取り出すと、一瞬だけ画面を明るくした。
そして、今度はズボンの左横ポケットに手を入れて何かを取り出した。
その時、コロコロと、小さな鈴の音がこぼれた。
あいつが手にしていたのは、先ほど行ったテーマパークのメインキャラクターがついたキーホルダーだった。
ウサギの雄キャラと、リボンを付けた雌キャラだ。
キーホルダーについたマスコットは、大人の手のひらですっぽり包み込めるほどの大きさで、だけどその毛並みはふわふわと上等そうに見えた。
あいつはその一つを、ポストの取り出し口の取っ手に、そっとかけた。
そしてもう一つを、再びポケットにしまった。
引っ掛けられたキーホルダーを、あいつはじっと見たあと、指先でそっと撫でるように触れた。
しゃらんというか細い音が、一層深くなった静かな闇の中ではきらめくように響いて吸い込まれていく。
その音が完全に消えるのを確認して、あいつはようやく僕の方に向きなおった。
「ごめん、待たせて。行こうか」
僕の自転車にまたがることもせず、あいつはそのまますたすたと歩いていく。
その後ろ姿に、僕は咄嗟に声をかけた。
「会わなくて、いいの?」
あいつはぴたり止まってから答えた。
「……お土産、渡しに来ただけだから」
「直接渡せばいいじゃん。僕、どっか行ってるし」
「こんな時間に呼び出せるかよ」
あいつは前を向いたまま軽く笑いながら言った。
その声や仕草から、僕は感じ取った。