夜風はひんやりと冷たかった。
その冷たさが、僕の中に残った興奮の火照りを消していく。

パーク内はあんなにもクリスマスのイベントで盛り上がっていたのに、ここはまるで別世界だった。
静けさと、薄暗い街灯のあかりが地面を照らしているだけだ。

「園田の自転車に乗せてもらうの、久しぶりだな」

風に流されてしまいそうなあいつの声が、背中越しにかすかに聞こえた。だから僕も「うん」とだけ小さく返した。

「元気してた?」
「うん」
「勉強、はかどってる?」
「……うん」
「何だよ、今の間」
「別に」

あいつがおかしそうに言うから、僕もそれを鼻で笑って返した。

本当は嬉しかったんだ。
こんなやりとりが、まだできることが。

あの冷たい空気は、僕の気のせいだったんだ。
たぶん僕は、坂井さんの手に触れたことをどこかで後ろめたく思っていたんだ。
あいつがいないところで、彼女に触れたことを。
そんな気持ちが、僕に勝手に勘違いさせたんだ。
あいつは、いつもと変わらないあいつだったのに。