閉園時間ぎりぎりになってからお土産を探し回るのも、毎年恒例だった。
最悪お土産はなしという選択肢ももちろんあって、そういう人たちはすでに門のところで待機している。

僕は、お土産を買う派だ。
別になくてもいいんだけど、こういうところに来ると、何かしら思い出が欲しくなる。
たいてい形が残らない食べ物になってしまうんだけど。

混雑するお土産売り場をうろうろしていると、その人混みから少し離れたところに、あいつがぽつんと立っていた。
目の前の棚の高さに合わせて腰を少し曲げ、ずらりと並ぶキーホルダーを物色していた。
その目はとても真剣だった。
あいつがお土産ひとつにこんなにも真剣になるのかと意外だった。
だけどあいつが選び取るのにそれほど時間はかからなかった。

あいつは棚からそっとキーホルダーを抜き取ると、輪っか部分をつまんで、そこからぶら下がるマスコットを目の前に持ってきた。
そしてしばらく、ぶらんぶらんとさせていた。

閉園時間が過ぎても、パークの人たちは何も言わず、最後までにこやかに僕たちに手を振り続けてくれていた。
その行為に甘えたわけではないけど、僕たちは名残惜しむように、ゆっくりゆっくりとパークを離れていった。
賑やかな音楽が少しずつ遠ざかっていくのを感じながら、今日の思い出話に花を咲かせた。
電車に乗っても魔法はなかなか解けなくて、広瀬なんかはいつまでも興奮して、先ほど出来上がったばかりの思い出に浸っていた。
今日のことだけでなく、この三年間の思い出や、すでに巣立った先輩たちとの思い出なんかも。
だけど、ひとり、またひとりと流れ解散していくと、電車の中は少しずつ静かになって、残った僕たちも各々スマホを見たり、ぼんやり外を眺めたりした。