「あの、それと……」

何か言いにくそうにうつむいている彼女に、僕は「ん?」と小さく尋ねた。

「あの、メッセージ……返事、できなくて、ごめんね」


__メッセージ……?


僕がぽかんとしているのを見て、坂井さんはさらに言いにくそうに、小さな声で言った。

「あの……会いたいって……」

その答えを聞いた僕の血の気は、僕の身をその場において一気にさーっと逃げていく。

どうしてこんな肝心なことを忘れてしまっていたんだろう。
忘れていたならもういっそ、忘れたままでいたかった。

「ごめんね、読んだのに、返事、しなくて」
「あ、ああ……ううん。僕の方こそ、ごめん、返事に困るようなメッセージ送って。あんなふうに送るつもりじゃなかったんだけど。手違いというか、事故というか……読み返して自分でもびっくりというか」

青ざめた僕の声は情けなく震えて裏返って、その場に立っているのもやっとなほどだった。