「僕も、ちょっと聞いただけだよ。詳しいことは何も聞いてないし」
それに言うなって言われてたし、なんて言ったら、岡田さんの怒りを誘うだけだろう。
「なんで園田君には言って、あかりには言わないのよ。勝見君、何考えてるの?」
「由美、園田君に怒ってもしょうがないよ。園田君だって、勝見君が私に留学のこと話してないって知らなかったんだよね?」
慌てて彼女が僕たちのもとにやってきて、僕の顔を覗き込みながらフォローしてくれる。
僕は情けなく「う、うん」なんて曖昧な返事をしながら目をそらした。
「でもそのせいで、あかりたち大喧嘩じゃん」
「……え?」
心の声が、思わず小さく表に出てきた。
視線も、ぱっと彼女に移される。
坂井さんは僕に向かって、「ちょっとだけね」なんてへらへらっと笑った。
だけど僕にはわかった。
「ちょとだけ」なんて喧嘩ではないことが、その弱々しい笑顔からひしひしと伝わってきた。
「園田君のせいじゃないよ。園田君は気にしないで。もう由美は……。園田君は関係ないんだから、巻き込んじゃだめだよ。園田君責めても、しょうがないじゃん」
「関係ない?」
岡田さんは低く唸るように言って、坂井さんをぎろりとにらみつけた。
「関係なかったら、なんであんなこと言うの? 園田君と付き合えばいいなんて」
「……え?」
岡田さんの言葉に、硬い声が出た。
「ちょっと、由美っ」
「あいつ、ほんとにそんなこと言ったの?」
僕は呆然となりながら、無意識のうちに坂井さんに聞いた。
「違うよ、園田君、そんなんじゃなくて」
そんなんじゃなかったら、何なんだ。
どういう展開で、そんなことになってるんだ。
何であいつは、そんなこと言うんだ。