その声は、どうやら学校中に届いたらしい。

僕の叫び声は、三年生の教室が並ぶ廊下はもちろん、下の階や上の階をつなぐ階段まで響き渡っていたそうだ。

また、広瀬が電源をオンにしていったトランシーバーが僕の叫びに耐えきれず、異様なハウリング音を出し、その現場付近にいた多くの人たちに、心霊現象を体感させた。

このクラスのお化け屋敷迷路はヤバい。
いや、この教室、ほんとに出る、なんていう噂が飛び交い、このクラスのお化け屋敷迷路は大盛況だった。

「終わった……もうだめだ」

「お化け屋敷迷路」と書かれたあの派手な看板の横に即席で取り付けられたスピーカーからは、そんなおどろおどろしい声が流れ始めた。
それは言うまでもなく、僕の声だ。
広瀬のクラスの放送部員に小さなピンマイクを取り付けられ、そこから流れていく。
そんな僕の悲壮感溢れる声は、このお化け屋敷迷路の不気味さを、よりグレードアップさせた。

僕はただ、引き続きドラキュラの格好をして、蓋が開いたままの棺の中にちょこんと座っていさえすればよかった。

「そんなつもりじゃなかったんだ。ごめんなさい、ごめんなさい……」

顔を覆い、うなだれて、髪をかきむしって……。

「やるなあ、園田。名演技だぞ」

広瀬はそう言ってほめてくれた。
けど、演技じゃない。
僕の、マジの心の声だ。

僕の名演技のおかげで、今年の最優秀出し物賞はお化け屋敷迷路が受賞した。
僕はその打ち上げに呼ばれた。
だけど、参加しなかった。
そんな気分になれない。
そもそもここ、僕のクラスじゃないし。