「会いたい」

スマホに目を向けたままもう一度そうつぶやいたとき、視界が急に明るくなった。
そのまぶしさに目がくらんで、手で顔を覆った。

「おい園田」

その明るさに徐々に慣れていくと、少しずつ外の景色が見え始めた。

__ああ、目覚めたばかりのドラキュラは、こんな気分なのか。

今ならドラキュラを、完璧に演じられるような気がする。

だけどそんな僕に浴びせられるのは、広瀬の罵声だった。
広瀬は僕に容赦なく懐中電灯の明かりを向けてくる。
なんだか色とりどりすぎてめまいがする。

「お前何やってんの?」
「え?」
「え? ……じゃねえよ。ドラキュラの棺が不気味に光ってるだけで何も起こらないって、出てきた人みんな言ってるし。自分のクラスじゃないからって、手抜くなよ。てかトランシーバー、電源オフになってんじゃん。まったく」
「ああ、ごめん」

トランシーバーのボタンをかちりと押すと「じゃあ、頼むぞ」とだけ言い残して、広瀬はすたすたと去っていく。