__坂井さん、大丈夫かな。火傷、ひどいのかな。

ぼんやりとそんなことを考えた。

ふと、真っ暗になったスマホの画面を見た。
サイドボタンをかちりと押すと、再び画面が明るくなる。
映し出されたホーム画面の中から、僕の指先がメッセージアプリをタップする。
呼び出したのは、坂井さんとのメッセージ画面。
そこにはいまだやりとりされた形跡はなく、まっさらだ。
僕はごくりと一つ唾をのんで、ゆっくりとメッセージを打ち込んだ。

『学校来てないけど、大丈夫?』

こんな感じでいいのかな? 
僕はその文字をざっと消した。

『火傷、大丈夫?』

なんか違う気がする。

『あの後、なんかあった?』

そんなこと、僕が気にすることじゃない。

書いては消し、消しては書いたけど、どれもなんだか不自然で、なんとなく腑に落ちなかった。

「はあ」とひとつ大きなため息を漏らして、棺の中を二酸化炭素でいっぱいにする。

「……会いたい」

狭くて暗い棺の中で、僕の小さな声がぽつりと放たれた。

一学期、夏休み、二学期……。
僕たちは毎日のように顔を合わせていた。
学校でも、塾でも。
そして文化祭の準備が始まってからは、ずっと一緒にいる。
買い物も、看板づくりも、休憩中も、放課後も。

坂井さんを近くに感じない日はなかった。
僕のそばには、いつも彼女の声と笑顔があった。
彼女でもないのに。
だけどそんな彼女の笑顔も、声も、今僕のそばにない。
彼女じゃないから当たり前なんだけど。

だけど、好きなんだから、思ってもいいじゃん?
会えない今が、寂しいって。
そばにいられないのが、辛いって。