「へえ。勝見君に一目ぼれかあ」
由美がまた失礼なことを言い出す前に、私は問題集に戻る。
シャープペンを握り直して、気合を入れる。
だって私は、受験生なんだから。
「まあ勝見君、イケメンではないけど頭いいし、運動神経も抜群だし。サッカーも上手いもんね。私あんまりサッカーのこと知らないけど、パスも正確だし、全体的な試合の流れ作ってるのって、実は勝見君なんだよね。動きも滑らかで、思わず見惚れちゃう。まあ広瀬のパフォーマンスが派手すぎて霞んでるけど」
「ゆーみっ」
低く唸るような声で由美をたしなめる。
勝見君の悪口は私が許さない。
私が送る厳しい視線に、由美がたじろぐ。
「あかりが勝見君と付き合ってなかったら、私も勝見君のすごさに気づかなかったってことだよ」
由美を厳しい視線で睨むけど、他人のことは言えない。
そういう私も、勝見君を好きになって意識するまでは、勝見君のすごさなんて知らなかったんだから。