「いや、僕のところには、何も……」
「そっか。今日一緒に回ろうと思ったのになあ」
残念そうに唇を尖らせる岡田さん。
そんな表情は、いつも見ているクールで美人というより、なんだか幼くてかわいかった。
「ああ、でも、あかりは勝見君とまわるかもね。もしかしたら、もう一緒にまわってたりして」
岡田さんの表情にときめいていた僕の心の灯が、さっと儚く吹き消されていく。
__あいつと、一緒にいるのかな?
「園田君は今日どうするの?」
その声に、ハッと我に返った。
「えっと、僕はテキトーに回ろうかなって」
「そうなんだ。じゃ、楽しんでね」
そう言って、岡田さんは僕のもとを去っていく。
僕はその背中をただ見送った。
そう、僕は今日テキトーに過ごす。
たった一人で。