あの後、坂井さんが僕たちのもとに戻ってくることはなかった。
そして文化祭二日目、坂井さんは学校に来なかった。
僕たちのクラスは担当が一日目と二日目で完全交代制なので、昨日担当だった僕たちは二日目がフリーになる。
だから学校に来なくても問題はない。
だけど坂井さんの様子が気になっていた。
「あかりに連絡しても返事が返ってこないんだけど、園田君、何か聞いてる?」
教室の隅に一人でいた僕に、岡田さんが声をかけてきた。
岡田さんが連絡して返事がないのに、僕のもとに坂井さんから何かしらの報告があるわけがない。
お互いの連絡先は知っているけど、岡田さんを含めたグループメッセージや、クラスの連絡用のグループでしかメッセージのやり取りをしたことがないのだから。
果たしてこれをメッセージのやり取りと言っていいのかはわからないけど。
とにかく、僕と坂井さんが個人的にメッセージのやり取りをするということは、今まで一度もない。
聞きたいことなんてたくさんあった。
話したいこともたくさんあった。
だけど僕は仮に用事があっても、岡田さんを含めたグループ内でしかメッセージを送ったことはないし、坂井さんに事務的に聞きたいことは、スマホを使わず、学校で聞くようにしていた。
だって、坂井さんはあいつの彼女なのに、あいつのいないところで坂井さんとやりとりするのは、なんだかいけないような気がしたから。