坂井さんの白い手に、火傷の跡が赤く刻まれている。
大したことないんだろうけど、僕にはすごく痛々しく見えて、思わずその部分をそっと撫でた。

小さくて、滑らかで、柔らくて、細い。
それに、冷たい……

そこで僕は、はっとなった。
十分坂井さんの手を触ったところでようやく僕は、今自分の手の中に坂井さんの手がすっぽり収まっていることに気づいた。

慌てて「ごめん」と言って手を離そうとした、その時だった。

僕の手が、柔らかな力に包み込まれた。

__……え?

その儚い力に、心臓までわしづかみにされたようで、息を吸ったまま止まった。

__どうしよう……、これは……

心臓のドクドクとする音が全身を駆け巡って、指先まで脈打っているのが感じられた。

__こんなことされたら、勘違い、しちゃうよ?

震える指先に、ゆっくりと力をこめた。
すると、彼女の柔らかな指の感触が、じわじわと実感に変わっていく。

__勘違い、してもいい?

「保健室、行こうか」

__離したくない。

「立てる?」

__このまま、奪ってしまおうか。

彼女の手を力強く握り直そうとした。