学校に着いて、自分の席に座る。

「みーゆきっ、おはよう」

美雪に語りかけるのは、学校でいつも話しかけてくれる人。

「お、おはよう……。七夏(なのか)さん」

「もう。その『さん』付けいつ無くなるの?」

栗色の肩まである髪をハーフアップにして、少しかっこいい容姿をしている七夏。

「ごめんなさい。まだ、慣れなくて……」

七夏は、美雪の前の席に座る。

「少しずつでいいけど。友達なんだからさ」

「うん……」

美雪にとって、人生で初めてと言ってもいい友人。
七夏の明るい性格に、何度も救われた。

「あ、そういえばさ。昨日、うちのお父さんがね──」

楽しそうに家族の話をする七夏が、美雪は羨ましかった。



「そうなんだ。愛されてるんだね、七夏さん」

「やめてよ、恥ずかいじゃん」

恥ずかしいと言いながらも、嬉しそうに微笑む、七夏。

──七夏さん、幸せそう。自分とは、全く違う。