携帯のアラームが鳴り、美雪(みゆき)は目を覚ます。
自室を出て、洗面台に向かい顔を洗ってリビングに向かう。

簡単に作った味噌汁と昨夜炊いておいたご飯を、お(わん)についでテーブルに運び、お茶をコップに注いで席に座る。

「いただきます」

まだ、誰も起きていない朝の早い時間。
美雪は、この一人の空間に慣れていた。幼い頃から、ずっと一人で身の回りの事をしてきたから。

──そういえば。また、あの夢を見た……。

数ヶ月前から突然、見るようになったあの不思議な夢。
二人の男女が出てきて、毎日違う夢が出てくる。夢の内容は、ほとんど鮮明に覚えている。

そして、今日見た夢があの女性が亡くなる夢。

──ああいうのを、夢見が悪いって言うのかな。

自分のことに関して、何も思わない美雪は夢の事に関しても、特に何も思うことはなかった。

食事を食べ終えてから、部屋に戻り制服を着て鏡の前で長い茶髪を整え、鞄を持って玄関に向かう。

「……いってきます」

誰もいない空間に、小さく呟くように言って、そっと玄関の扉を開けて家を出た。