屋敷に帰ってきた二人は、翠翔の部屋でゆったりとしていた。

──私本当に、ここに住むことになったんだ……。それに、あの夢のこともまだ分かってないな……。

自分で一緒にいたいとは言ったものの、と今更恥ずかしくなってきて、頬が熱くなる。

「大丈夫か?」

翠翔の心配そうな声にハッとして、こくりと頷く。

「大丈夫です。だけど、自分で言ったことなのにまだ実感が湧かなくて──」

その時、翠翔から顎を優しく掴まれ、美しい顔が近づいてきた。

美雪は訳が分からずに、ぎゅっと目を閉じた。

頬に熱く、柔らかいものが当たった。

それが何なのかを悟った瞬間、みるみるうちに美雪の顔は赤くなっていく。


少しして、翠翔の顔が離れた。

「これでも、実感は湧かないか?」

「あ、う、わ、わきま、す……」

顔を真っ赤にして言う美雪に、クスッと笑った翠翔は「そうか」と嬉しそうに言った。

「これから、よろしく頼む」

翠翔は、美雪の頭を優しく撫でた。

「はい。よろしくお願いします」

美雪は、初めて感じる幸福感を噛み締めながら微笑んだ。

──この人となら、きっと大丈夫。

そう思いながら。