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「な、なぜ、あ……の子に優しくするのですか……?」
翠翔に恐れている父でも、なぜあんな奴が優遇されているのだと疑問を持っているようだ。
「さっきその少年に言ったのが聞こえませんでしたか? あの子は俺の番だと」
「つ、つがっ……!?」
父は心底驚き、弟はありえないという表情をした。
「あ、あの姉さんが、番……? しかも、あの希龍家の……」
母と弟は事の重大さをやっと察したのか、みるみるうちに顔色が変わっていく。
「まあ……。詳しい話は、また今度しましょう。理解する時間も必要でしょうから」
翠翔は部屋を出ようと、ドアノブに手をかけた時、「あっ」と何かを思い出したように振り返った。
「貴方達が、美雪にした事は既にこちらは知っているので。逃げたりとかは出来ないと思ってくださいね」
その瞬間、外で勢いよく雷が鳴った。
龍の怒りを表したような翠翔の笑顔は、三人に恐怖を植え付けた。
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