朝食を食べ終え、部屋に戻った美雪は、椅子に沈み込むように座った。

「どれも美味しかった。けど……」

──慣れないもの食べすぎて、胃もたれしそう……。まだ若いはずなのに……。

ふと、机に置いていたスマホの着信音が鳴った。
手に取って開くと、七夏からのメールだった。

なにか連絡する事があっただろうかと、確認のために画面を開く。

見ると、『おはよう!』の文字と共にスタンプが送られてきていた。

友人同士が送るなんでもないやり取りだが、美雪は違った。

「スマホって凄い……」

スマホを使って、友人とメールなどをした事がなかった美雪は、感嘆していた。

家族とも、必要最低限のやり取りくらいしか……というよりほとんどしないので、美雪は目を輝かせた。

ハッとして、すぐに「おはよう」と送った。
するとすぐに返事が来た。

「メールって凄い……」



しばらく七夏とメールで話していると、襖の向こう側から、翠翔が「美雪。少しいいか?」と言われ、「は、はいっ」と返事をした。

部屋に招き入れ、長椅子に二人で隣合うように座る。

「特に不便はないか?」

「全然ありません。皆さん優しくて、とても良くしてもらってます」

「そうか。それは良かった」

翠翔に優しく微笑まれ、思わずドキッとしてしまう。

「だが、少し心配なことがあるんだ」

「?」

美雪は、なんだろうと、首を傾げる。

「君のご家族は、心配しているんじゃないかと思ったんだ」

「あ……」

家族は、美雪の心配などする人達ではないから、特に問題は無いだろうと頭から消えていた。

だが、翠翔は美雪の家族のことを知らないので、そう思うのも無理はない。

──ちゃんと、説明した方がいいよね……。

美雪はきゅっと口を(つむ)ぐ。

今まで、家族のことを誰にも話したことは無い。
唯一の友人である七夏にでさえも。

美雪の家庭の事を知っている近所の人は、愛されない美雪を(あわ)れんで距離を置いてきた。

だから、翠翔や七夏に話して距離を取られた時、また独りになってしまうのではないかと、怖い。

──でも、話さないと。きっと、もっと心配させちゃう。