目が覚めると、見慣れない天井に違和感を覚えたが、翠翔の屋敷だとすぐに思い出す。
──あの人、表情は変わってなかったけど……。とても哀しそうな目をしてた。
自分にそっくりな人の言っていたことを思い出す。
『絶対に、あの人から離れないで』
『お願い。今度こそ……幸せになって』
一体どういうことだろうと、考えてみるが、そう簡単に答えは出そうにない。
体を起こして、部屋にある時計を見ると朝の八時だった。
運がいいことに、今日は学校が休みなので慌てる必要が無かった。
「美雪さま。お目覚めですか?」
襖の向こう側から、優春の声が聞こえ、ビクッと体を震わせた。
「は、はいっ」
「朝食の準備が出来ておりますが、どちらで召し上がりになりますか?」
「あ、えっと。き、昨日夕食を食べたところで……」
「かしこまりました」
屋敷の使用人が用意してくれていた洋服を適当に着て、昨日の部屋に向かった。
「お、おはようございます」
「ああ。おはよう。昨日はよく眠れたか?」
翠翔の優しい微笑みに、美雪は頬が熱くなるのを感じた。
「は、はい。とても、よく眠れました」
「それは良かった」
──周りの方々から、温かい眼差しが向けられている気がする……。
朝食は、昨夜出た和食ではなくパンやスープなどといった洋食が出てきた。
「わあ……!」
──昨日出てきたのも、全部美味しかったけど。この料理もとても美味しそう。
ハッと、翠翔をちらりと見る。
昨夜のように笑ってはいないが、微笑ましそうに美雪を見ている。
「食べないのか?」
「い、いえっ。いただきます!」