入浴を終えた美雪は、先程からとても良くしてくれている使用人の優春(やよい)に質問をした。

「あの、優春さん」

「何でしょうか、美雪さま」

優春は聖母のような微笑みを浮かべて、返事をした。

「優春さんのような人達は、翠翔さんも含めて龍のあやかし、なんですよね?」

「はい。本家である希龍家とは違い、私共使用人は、代々、希龍家に仕える分家ですが、能力は個々持っております」

優春は右手に水、左手に(かみなり)を作り、美雪に見せた。

「凄い……」

「龍のあやかしは、昔から水と雷を(あやつ)る事が出来ます。私は微力しか使えませんが、翠翔さまなど本家の方々は、私共はもちろん、他のあやかしなど比べ物にならない程、強い能力を持っています」

「や、優春さんよりも?」

「はい。私などよりも」

にこり、と微笑む優春が、嘘を言っているようには見えなかった。

先程の優春の見せてくれたものにも驚いたのに、それ以上の能力となると、一体どれほどなのだろうか。想像しただけでも、震え上がりそうだ。

「ご心配なさらなくても、能力を使うことなど滅多にございませんよ」

美雪を安心させるように、優春は優しく微笑む。

「そ、そうですよね」

「さあ、もうお休み下さい。お話はまた今度致しましょう」

「あ、はい。お布団、ありがとうございます。おやすみなさい」

優春は深く丁寧に頭を下げると、部屋から出た。

──優春さん。失礼だけど、おばあちゃんみたいな人……。

美雪は、畳にしかれている布団に入る。

いつも家のベッドは冷たいのに、この布団からは温もりを感じた。

──私のおばあちゃんも生きてたら、あんな感じだったのかな……。

そう思いながら、布団の温もりに包まれて、美雪は深い眠りについた。