「だから、可能性なんて1%あれば十分なんだよ」


そう言った彼女の言葉はとても説得力を持っていて、だから私の背中を押した。


「じゃあ、私も動かせるかな?ユイの彼がやったみたいに」


少し恥ずかしそうに「当たり前じゃん」なんて答えるユイを見て、私の心は決まったも同然だった。


「ありがと、なんか決心付いた」

「でしょ?私に話して良かったでしょ」

「うん。でも後はユイをどうやって口説いたのか彼に聞くだけなんだけど…」

「そこは愛だよね」

「……愛ね」



――そして次の日、私は電話をかける。


「やっと決心が付きました」と告げた私に、ミトさんは待ってました!と言わんばかりに喜んでくれた。

6日も経ってしまったから少し不安だったけれど、彼の電話越しでも伝わる嬉しそうな雰囲気で私はホッと胸を撫で下ろす。

善は急げだ。そう呟いたミトさんは、すぐにでも行こうと言い出して、その日の夜、うちのアパートまで来てくれるという事になった。


まさかこんなにも早く話が進むなんて、本当に、思いもしなかった。でも…逆に、良かったのかもしれない。

始めこそ焦ったものの、この決心が鈍らない内に行ける事になったのはきっと、良い事なのだろうと思う。

だからこれが最後のチャンスだと思って、私は私の思っている事全てを彼に伝えてこよう。

向こうの事が知りたいからこそ、私は私を知って貰うんだ。


そんなユイからの教えを胸に、私は迎えに来てくれたミトさんの車の中で改めて誓った。



そして、私が乗ってすぐのこと。


「ここだよ」


聞こえてきたミトさんの声と共に、車が静かに停まった。