――この手を伸ばせば君へ届く。でも、僕が手を伸ばす事は無い。君への触れ方が分からない僕に、そんな勇気は無いんだ――



調度サビの前の部分。この部分が私の心に深く残った。会いたいけど会えない。会えるのに、会いたくない。そんな私の気持ちを表してるような気がして、気が付いたら歌詞に自分を重ねていた。

だから、聞き終わってから、「ね?」と、言ったユイに、私は大きく頷いて見せる。


この曲では結局、会いたいけど会わないという決断をして終わりを迎えた。君がそこに居るのなら、もうそれだけで良いという、言葉と共に。


私は、改めて考える。もし、私があめさんと会ったとして、あの時のあめさんが言った言葉の意味も分からない私は、一体あめさんに何をしてあげられるんだろう。私に会いたく無いあめさんは、勝手に会いに来た私にどんな対応を取るのだろう。

何もしなければ、もしかしたらいつかまた、あの場所に現れるかもしれない。でも、会いに行って嫌われてしまったら?もう二度と、彼は姿を現さないかもしれない。

そんな事になっえしまうのならやっぱり、私はあめさんに会わない方が――


「でもさ、そんなの勿体ないよね」

「…え?」


突如聞こえてきたその言葉に、私は考える事を止めて耳を傾けた。


「手を伸ばせば届くんでしょ?だったら伸ばせば良いのに」


そう言った人生を楽しく生きる上級者、ユイは、 それが難しいんだよと言いたくて仕方ない私の反応を見て「まぁ、気持ちは分かるんだけどね」と、付け足す。