「なんか、会えるって分かる前まではね?何て思われてても良いから、一度だけでも会いたいなぁ…なんて思ってたんだけどさ」

「……」

「でもいざ会えるとなると、急に怖くなっちゃって。会えたとしても拒否されたらやっぱり悲しいし、誰?なんて、向こうに忘れ去られてるって事も有り得るでしょ?」

「……」

「なんかやっぱり妄想と現実は違うなぁって、改めて感じた。もうなんか、どうする事が1番良いのか分かんないんだよね」

「……、!」

「まぁ、こんなのどうせただ私が傷付きたくないだけに決まってるんだけど…あれ?何、どうしたの?」


急に大きな瞳を更に一回り大きくさせて顔を上げたユイ。その表情は先程とは打って変わって、なんだかスッキリとしていて、彼女は私の方を見て「思い出した!」と明るい声色で言った。


「どっかで似たような事聞いた事ある気がしたんだよ!コレだコレ!」


そう言ってゴソゴソと鞄からと彼女が取り出したのは、ピンクのiPod。


「この歌の歌詞、今のハルキみたいなんだよね。まぁとりあえず聞いて!」


イヤフォンを私に手渡して、ユイは曲を再生した。前奏の後に続けて聞こえて来たのは、聞き覚えのある女性の歌声。


「…アサヒ?」


そう私が小さな声で呟くと、ユイは頷き、それが昨日発売された新曲のカップリングだと教えてくれた。

静かな中に激しさを含んだバラードで、始めにユイに言われたからかもしれないけれど、まさに私の今の心境を歌にしたといっても過言では無いような、後ろ向きに彷徨っている状況を表している曲だった。

悲しく切ない歌詞を力強く歌い上げるアサヒの声に、私は胸を締め付けられる。