…それなのに。
「いや、そんなの分かんねぇけどさ」
ミトさんは必死な私の訴えを、そのたった一言で揉み消した。まるでたいした事でも無いと言うようにミトさんはその後、「何にせよ、アイツに会ってやってくれれば、俺は助かるんだけど」なんて、しれっとした顔で私に言う。
い、いやいや、そんな事を言われても。そんな簡単な事じゃないんです!会って貰えないって、私言いましたよね?
「だから、あめさんが来てくれなきゃ会おうにも会えないんです」
「なんで?」
「なんでって、あの場所以外にあめさんと会う場所なんてどこにも無いし、どこに居るのかも知らないし…」
「うん、だから俺が来た訳」
「…?」
訳が分からないと、じっとミトさんを見る私の目は訴えていたのだろう。彼は笑いながら私の視線の答えをくれた。
「連れてくよ、アイツん家まで」
そして、「元々そのつもりだったんだけど」なんて思惑も、正直に披露してくれた。
それはミトさんからの素敵な提案――の、はずだった。