だから、「でもな、折角良い感じだったのにアイツ、なんかまた尖んがってんだよな」なんてミトさんが話してるのに、私は心此処に在らずな返事しか出来なかった。
どうせ会えないのに、私には関係なんて無くなってしまったのに、こんな話をされてもどうしようも無い。
「調度1ヶ月前ぐらいからだ。何かあったみたいでさ、」
「はい」
「アイツすっかり調子悪ぃんだわ」
「はい」
「始めからいつかこうなるのは目に見えてたし、実際俺的にも丸く収まって助かるっつー事で気づかねぇ振りしてたんだけど…こうも悪くなられるとさすがに困んだよな」
「はい」
「だから、やっぱりハルキちゃんに助けて貰おうと思って」
「はい……はい?」
突然登場した自分の名前に、私はハッと我に帰って聞き直した。聞き間違いかとも思った。ちゃんと聞いていなかったから。でも、ミトさんは困ったように笑いながら、「ちゃんと聞いてなかったろ?」なんて言って、短くまとめてそれを告げる。
「だからハルキちゃんには、アイツを立ち直らせる手伝いをして貰おうと思います」
それでようやく私の聞き間違いでは無かったのだと理解した。これは私に言われているもので、私がお願いされているもの。そう、理解はしたけれど…私には、出来ない。
「…頼って貰えて嬉しいです。出来る事ならお手伝いしたいのですが…でも、」
「でも?」
でも、私はあめさんに何の影響力も持たない。あめさんは、私の助けなんてきっと必要としてない。だってあめさんは、私を遠ざけたのだから。
「…あめさんは、私の助けなんか必要として無いです」
まるで千切れてしまいそうな心地だった。人の助けになる事が私の持つ意味なのに、目の前に居た大切な人の助けにはなれなかった。
そんな私なんて…何の意味も持たない存在だ。