その問いに、私は「多分、1ヶ月ぐらいです」と答えた。
…でも、本当は知っている。多分じゃなくて確実な事も、今日を過ぎると1ヶ月になる事も。それでも、私が執着しているように見えないように、多分と濁して答えたのは、私の見栄だった。
そんな私の心境には気付かないミトさんは、私の返事から別の何かを得たらしい。そうだよな。なんて独り言を呟く。
「アイツ、最近出て来なくてさ。まぁ…1ヶ月前くらいからかな。ハルキちゃん、アイツと何かあっただろ」
「え、いや…その……」
「うん。もうさ、俺も困ってて。だからハルキちゃんの力を借りたいんだよね」
「…私のですか?」
「うん。ハルキちゃんに、アイツを復活させて欲しくて」
「復活?」
「そう。アイツ、このところ落ち着か無かったんだけどさ――」
その頭出しから、ミトさんは私の知らないあめさんについて、語り出す。
「最近になってアイツ、なんかゆとりが出来たんだよ。何考えてんだか分かんねぇし、なかなか顔に出さねぇ奴だったけど、この所妙に尖んがってた雰囲気が柔らかくなってさ。ホッとしてたんだよな」
「…そうなんですか…」
…私は、あめさんって思った事をすぐ顔に出す人だなって思っていた。嬉しいとすぐに笑うし、嫌だとすぐに不機嫌になるし、クルクル表情が変わる人だった気がする。
「まぁ、酔ってる時はかわいー奴なんだけどな。そこに行くまでが毎度長ぇ長ぇ」
「……そうなんですか」
そう。つまり、やっぱり私は酔った彼しか知らなかったという事。私にあるあめさんのイメージは、酔った時だけのものだった。その事実にとても薄っぺらい関係だったのだなと、現実を思い知らされる。
思い知らされて…頭の中が、ぼんやりとする。
ぼんやりと、もうあめさんに会う事は無いんだろうな…と、感じる。