それを確認した瞬間、思い描いたのは言うまでも無く、あの人。


「!、あめさ、」


"ん”を言い切る前に、目の前に現れたのは、黒髪の彼。


「ごめんね、アイツじゃなくて」


そんな事を言いながらも、悪気を感じている様にはこれっぽっちも見えないその人は、ミトさんだった。


「…ミトさん?」

「そう。覚えててくれたんだ」


嬉しいなぁ〜と、どこか胡散臭く彼は笑う。一体何の用だろうと、その笑顔を見ると素直に受け入れられない私が居て、ミトさんはそんな私に気付いている。


「ちょっと話があるんだ、アイツの事で」


だからミトさんは、穏やかな口調でそう言ったんだと思う。私の警戒心を解き、興味を引く為に。そしてもちろん私は、それに飛びついた。


「アイツって、あめさんの事ですよね?」


するとミトさんは「あめさん?」と、私の言葉を繰り返し、怪訝そうな表情をする。しかしその後すぐに、「あぁ」と、彼は何やら納得したような声をあげた。


「君はアイツの事そう呼んでんだっけ。そしたらそのあめさんの話をしたくて来たんだ」


何事も無く話を進める彼のその返答に、私は、んん?と引っ掛かりを感じる。


だって、何かサラッと受け入れられたから。 "あめさん”なんていう自分で言うのも難だけど、こんな、変な名前で呼ばれているというのに、なんか名前をつけられている事に慣れてる感じがするというか…


「… "君は”ですか?」

「ん?」

「他の人は何て呼んでるんですか?」


多分、本名で呼んでいるのだとか、そういう話ではないのだと受け取った。彼には他にも名前がつけられていて、私のあめさんもその内の一つなのだと、私は直感的に受け取ったんだけど…どうなんだろう。