そこで感じ取ったのは、暗くて深い、心の闇。私はこれを、知っている。
それには自然消滅なんて無い事も、それに捕われたら一人での脱出は不可能だって事も、私は今まで嫌というほど学んだ。
そしてそれは、今でも私を飲み込もうとしている。同じだ、あめさんは私と同じ。
あめさんは一体、どんな悩みを抱えているんだろう。
彼を蝕む闇がどれだけ大きな物なのか、私には分からない。私は彼を、何も知らない。
そんな私が何を想って、何をしても、それは彼にとって無意味だ。私の存在の価値なんて、彼にとってはそんなものだ。
だから私には、私が力になれないのなら、せめて彼の力になってくれる人物が現れるよう、彼をそこから連れ出してくれるよう願う事しか出来なかった。
それだけが、私に出来る事なのだと思った。
――その日を境に、私があめさんの姿を見る事は無くなった。
あの時間は、現実にあった時間なのか。あめさんなんて人は、本当に居たのか。そんな事を思ってしまうくらいに、あの日から沢山の日々が過ぎ去っていった。
でも、そんな想いに捕われる度に、私を引き止める物がある。あれは現実だったのだと、私に訴えかけるソレ。ソレは今でも私の鞄の中に眠っている。
あめさんから預けられた、大事な煙草。
それがある限り私の中にあめさんは存在したし、それを見る度に私は彼を心配した。元気にしているのかだけが、心配で仕方なかった。
そして、あれだけ暑かった日々も終わりを漂わせ始めて、だんだん秋の気配が見えて来た頃。あれからもう少しで1ヶ月が経とうとしていたある日の事。
バイト帰りの私の目の前に、見覚えのある車が一台停まっていた。