あめさんはそう言うと、前へ向けたままだった視線を静かに私へと向けた。


目が合った瞬間、私にとっての余計な考えは全て消え去った。想うのは、あなたの事。


何て顔をするの?本当は何て言いたいの?何を求めてるの?私は、どうすれば良いの?


彼が私に見せた表情が、とても淋しそうだったから。初めて見た、彼の独りぼっちの顔。


「……俺の代わりは沢山居るから」


その呟きと共に、彼は歩き出し、視線はもう、私をとらえる事は無かった。


そんな彼の背中に、違うと言いたかった。言って、彼を引き止めたかった。そんな事ないよって、慰めたかった。

でも…私には、それが出来なかった。


彼が呟いたその一言は、彼の本当の気持ちだと思う。あんなに心から搾り出した言葉は初めてのもので。


“俺の代わりは沢山居るから”


一体何故彼がそう思ってしまったのか、それには絶対に理由があるはずなのに、その理由が分からないまま無責任に否定する事は、私には出来なかった。

彼の表情が、脳裏から離れない。