前回は居なかったのだから、今日はきっと居るはず。期待に胸を膨らませて、自然に足は動きを速める。
早く確認したい。早く安心したい。早くいつもに戻りたい。
私の頭の中にはそれしか無いはずだった。それで一杯一杯だったはずなのだけれど、目に入ったその姿。
「だ、大丈夫ですか?!」
私は、急いでその人の方へと駆け寄る。
よろよろと歩きながら、電柱にぶつかるその人。そのぶつかった反動で、かなりの勢いでその場き尻餅をついていた。
そんな姿を見てしまったら、私がやる事はただ一つ。今まで考えていた事なんて全て吹き飛んで、今、頭の中には彼を助ける事しかない。
座り込んだままの動かないその人の横に屈んで、様子を窺うと、焦点の合わない瞳で、今の自分に起きた事を必死に理解しようとしている様だった。こんなに近くで声を掛けている私の存在にすら気が付いていない。かなり酔っている。
「…あの、聞こえてます?大丈夫ですか?」
まずは意識を向けなければと、私は彼の肩を叩きながら声を掛け、こちらに注意を向ける。するとようやく私に気が付いた彼は、ゆっくりこちらを見上げて来た。
見たことが無い、初対面の男性。見た感じ、20代後半くらいだろうか。彼は私を確認した瞬間、ゆっくりと驚いた表情を作る。