彼は、周りに居る人間とは違う。私達のような普通な人間とは違う。それを、いつもとは違う位置から見る彼の、いつもとは違う様子から感じ取った。

その瞬間、私はいつの間にか止めていた足を再度動かせて、いつも通りに帰路につく。

一瞬だけ、その時のあめさんと目が合ったように思ったけど…多分、私の勘違いだ。だって彼は無情なくらい、無反応だった。

彼から見える私は、辺りの風景の一つに紛れ込んでいるのだと思うと、無性に虚しく感じた。

彼は特別な人。私にとっても、他の人にとっても。でも私は特別ではい。彼の、特別にはなれない。それは、当たり前の事。


あんなにスッキリとしていた私の気分は一瞬にして地に落ちて、それからというもの、心の中のモヤが晴れる事は無かった。誰と居ても、何をしても。

この気持ちと向き合ってみるも、私にはどうしよう出来ない。私一人では、この気分を解消する事が出来ないのだとようやく気が付き、私は解決策を導き出した。

方法は、ただ一つ。またあめさんといつもの場所でいつものように会う事、それしかない。会って、そんな悩みはちっぽけなものだと確認したい。きっとあめさんならそう思わせてくれるはず。

そう思えば思う程、早く早くと気持ちが焦り、余計に落ち着けないまま日々を過ごす事になった。


そして迎えた、バイトの日。待ちに待ったこの日、私はさっさと帰り仕度をして休憩室を出た。