別に珍しい事では無い。それに、今日居ないという事は次の時には居るという事だと、今までの経験上知っている。落ち込む必要は無い。

気持ちを切り替えて立ち上がると、階段を下り、大通りへと向かった。

先程の階段までとは打って変わって、街灯やら店の光やらで明るい通りだ。そこまでくれば深夜といえど誰かしら歩いている。初めて越してきた時は、静かであるのに賑やかでもあるその空気感に戸惑いを感じたけれど、今ではすっかり慣れたものだ。辺りにたいした関心も持たず、私はスタスタとその道を歩く。


その時だった。視界の隅に入った金髪。数人の集まりの中に埋もれているのに、私の目を引くその姿。

…あめさんだ。向こうの歩道に、あめさんが居る。

7人位の男女の中で、俯き加減に立つ彼。彼が酔っているかどうかなんて、ここからでは分かるはずもないのに、何故かそのあめさんが酔っていないと、私には分かるような気がした。

だってあそこに居るのは、私の知るあめさんでは無い。そんな気がする。なんだかとても遠い存在の、あめさん。

私にとってここから見える彼は、まるでアサヒのような存在に見えた。